第一作目「美式天然」では、【失われた映画フィルム】を、第二作目「アリア」では、【手放してしまったピアノ】を基本モチーフにして、大切な何かを失った人々が、ゆっくりと何かを取り戻していく様を、説明的なセリフに頼らない独自のスタイルと、詩情あふれる映像美とで紡ぎ上げ、人種や年齢を問わず、各国で絶賛されてきた坪川拓史。
この第三作目「ハーメルン」では、北海道に実在する【海辺の鉄橋】をモチーフに、時代の流れに置き去りにされたかのような小さな町と、そこに生きる人々の人生模様を、この【海辺の鉄橋】に投影しながら、静かに美しく描かれていく。
世界は今、経済至上主義(便利・快適のあくなき追求)に突き進んで来た結果生じた、多くの歪みの前に立ちすくんでいる。
そして多くの人々が、失くしてきてしまった事柄の重大さに、気がつき始めている。
映画「ハーメルン」は、そんな一人ひとりの心の奥にある、今も世界中にあふれているはずの〝目には見えないけど存在する大切なもの″を感じる、又は、思い起こすきっかけとなる作品。

