土地の記憶。
◇仕事の都合で六本木へ行った。
できれば行きたくない街だが、仕方ない。
僕の中の六本木...それは、
【シネヴィヴァン六本木】と【WAVE】がある街。
そして、ガラス屋のビルの地下に、
壁も天井も床も真っ黒に塗られた芝居小屋【自由劇場】がある街。
今では、東京国際映画祭開催の時期にだけ行く街だが、
その時は必ず、
「ここにWAVEが」
「ここに神社が」
「ここに怪しげなお屋敷が」と
自分の中の記憶の地図を確認しながら通り過ぎる。
◇そんな事を思いながらの帰り道。
中野の五差路にさしかかって思わず、ぅわあ~~~~!と叫んでしまった。
中野光座が......
無い。
『美式天然』が、まさかのクランクアップを迎えた場所が...
小松政夫さんが、弁士役を熱演して下さったあの場所が...
これで、『美式天然』の中に出てくる映画館が、二つとも消えてしまった。
『掌の小説/日本人アンナ』で使わせて頂いた横浜の映画館も、
一年後に再訪したら、駐車場になっていた。
◇この三月、
弘前のKさんから、残念なニュースを知らされた。
「高山稲荷神社の鳥居倒壊」
『アリア』で撮影させて頂いた、青森県高山稲荷の波打ち際にたっていた鳥居だ。
2006年1月のロケハン時、
僕らが立っていられない程の猛烈な風の中でも、びくともせずにいたのに...
再建されるとのことなので、一日も早い復興を願わずにはおられない。
◇そして今、『ハーメルン』を撮っている。
メインの撮影場所は、廃校である。
撮影終了と同時に解体される事が決まっている。
昨秋、一足先に体育館が解体され、その部分の撮影は終えた。
僕ができる事は、フィルムに残す事だけ。
「古いものを全て保存しろ~」と言っている訳ではない。
時が移ろう限り、それはある程度、致し方のないこと。
それに、
小さな自治体や、ましては個人だけで維持するには、荷が重過ぎる。
でも、
消える場所はひとつだとしても、
その場所に関わる記憶は、おそらく数え切れない程あるだろう。
ある場所が消えるという事は、
その場所と共にあった記憶も消えていくこと。
人は忘れていく生き物。
史跡かなにかで無い限り、代が変われば、確実に薄れていく。
僕は、そんな消えていく場所に、「ありがとう」を言いたいだけだ。
僕よりも、はるかに年上の場所が、誰にも顧みられることもなく、
「お疲れさま」も「ありがとう」も言われずに、日々消えていく。
消えていくのはしょうがない事だとしても、
せめて大きな声で、「ありがとうございました」を言いたい。
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2010. 07. 15 Thu 21:31 | 返信 あつこ
7/14の坪川監督のブログ観ました。
今朝、それを観てからずっと切なく、心にジーンとくるものがありました。
自分の懐かしい思い出やお世話になった場所が廃墟となるのはさみしく、もう一度会いたいと思ってしまいますね。
映画も同じことが言えます。とても印象的で深く心に刻まれた作品によって、これまでの人生観も変わる。そしてわたしの場合「主人公の前に自分を置いて」創造してしまいます。またその作品に会いたい!主人公に会いたい!と。。
「ハーメルン」で廃校となる最後の校舎、人々のしみじみとした思いが観る人の心に深く刻まれる最高の映画となると思います。
2010. 07. 20 Tue 14:18 | 返信 坪川拓史
あつこ様
一日も早く「ハーメルン」を御覧頂けますよう、進んでいきますね。
有難うございます。
2010. 07. 24 Sat 22:54 | 返信 紙パックおばさん
子どもの頃、若い時、何の感慨もなく当たり前のように見ていたものの数々が、目の前から消えて愕然となる…
約40年下手な写真はたくさん撮ってきたのですが、やはり子どもに目が行って、人物写真ばかり…
愕然となった頃、アァ定点写真を撮っておくべきだったんだ・・!と強く思いました。でもそれからも何もできず…
美式天然の中に見事に刻み込まれた劇場を思い出すたび、特有の臭いさえも甦る気がします。きっとあなたは、たくさんの方々の心に残っていくべきものに対峙する運命を持っていらっしゃるのです。これからも映画の中に宝物を配していってください。
2010. 07. 26 Mon 20:16 | 返信 坪川拓史
>紙パックおばさん様
有難いメッセージを有難うございます!
『美式天然』、また御覧頂きたいです。